今日のテーマはこちら、「税理士に敬遠される社長の特徴3選」。
個人・法人を問わず、代表者の方に向けてお話しします。
これまで1000人以上の中小企業経営者と関わってきました。
経営者の方にはクセが強くて個性的な方も多いですが、
中には「ちょっと困るな…」と感じるタイプの方もいました。
今日は誰かを批判する意図ではありませんが、
税理士に敬遠されがちな社長の特徴3つを挙げてお話しします。
まずは結論です。
今日お伝えする3つの特徴すべてに当てはまると、
税理士から断られる可能性があります。
それだけでなく、会社の成長すら難しくなる場合も。
ぜひ改善していきましょう。
ここからは詳しく解説していきます。
黒字社長 vs 赤字社長の違い
最初に復習として「黒字社長と赤字社長の違い」を見ていきます。
それぞれの特徴を整理すると、見えてくるものがあります。
こだわり・ポリシーの違い
黒字社長はこだわりがありつつも柔軟性を持っています。
変化に適応する力が高く、過去にとらわれすぎません。
一方、赤字社長は過去の栄光に固執しがちです。
「以前これでうまくいったから今回も…」と、判断を誤ることがあります。
勉強するかどうか
黒字社長は勉強熱心で、常に情報収集に前向きです。
変化に対応し、学んだことをすぐに取り入れます。
一方、赤字社長は学ぶ意欲が乏しく、過去の経験に頼る傾向があります。
行動力の差
黒字社長は学んだことを即行動に移します。
思考も早く、実行も早い、いわば「せっかち」な人が多いです。
一方、赤字社長は言い訳が多く、動きが遅い傾向にあります。
「政治が悪い」「業界が厳しい」など、行動しない理由ばかり並べがちです。
売上・利益への考え方の違い
売上に対する考え方
黒字社長は「業務を終え、請求し、入金されて初めて売上成立」と考えます。
一方、赤字社長は「とりあえず仕事が終われば満足」という思考。
債権管理や資金回収への意識が弱い傾向があります。
利益に対するスタンス
黒字社長は長期視点で戦略的に利益を見ます。
将来の拡大や安定に向けて、あえて短期的に利益を抑えることもあります。
赤字社長は、今すぐの利益ばかりを優先しがち。
多少の損やリスクも顧みず、売上だけを追う傾向があります。
利益率・経費削減の考え方
黒字社長は「粗利率を上げる」ための改善に取り組みます。
一方、赤字社長は「経費削減」ばかりに目を向けがちです。
もちろん経費削減は重要ですが、
必要な投資や人件費まで削ってしまうと、かえって士気や効率が下がります。
仕事の選び方と交渉力
赤字社長は「どんな仕事でもとにかく受ける」タイプ。
焦って仕事を取りに行く傾向があります。
黒字社長は「採算が合わない仕事は断る」判断ができます。
今後ますます求められる「単価アップと生産性の向上」には欠かせない姿勢です。
売上金額より「利益率の高い仕事」を選ぶ力が、今後さらに重要になります。
財務感覚と税務意識の差
資産に対する考え方
赤字社長は「総資産(見た目の規模)」を重視します。
黒字社長は「自己資本比率(中身)」を重視します。
自己資本比率が30%以上あると、財務的に安全な会社と見なされます。
黒字社長は「規模の拡大より中身の健全化」を大切にしています。
税務・会計への姿勢
赤字社長は「どんぶり勘定」や「無理な節税」をする傾向があります。
帳簿もぐちゃぐちゃで、数字の把握ができていないことも多いです。
一方、黒字社長は「月次決算をきちんと行い」、
数字をもとに経営判断をしています。
節税も行いますが、納税もきちんと実行し、自己資本を厚くしていきます。
税理士が敬遠する社長の特徴とは?
ここまで、黒字社長と赤字社長の違いについて、いくつかのポイントに分けて整理・分析してきました。
いわば復習のような内容ですが、ぜひ皆さんの中でも心に留めておいていただきたいと思います。
さて、ここからが本題です。
「税理士が敬遠する社長の特徴3選」ということで、これから具体的にお話ししていきます。
「うーん、ちょっとこの社長・この会社の仕事は受けたくないな…」
税理士がそう思ってしまうようなケースが、実際に存在します。
その特徴は、先ほどお話しした「黒字社長と赤字社長の違い」の中にもヒントが隠れています。
ですので、それを踏まえながら聞いていただければと思います。
税理士が敬遠する社長の特徴①:脱税志向がある
もうこれは当然の話ですね。
税理士の仕事の一つは、申告書を作成し、それに責任を持って押印・署名することです。
それには当然、大きな責任が伴います。
場合によっては「脱税ほう助」というかたちで、税理士自身が資格を失うリスクすらあるわけです。
そんなリスクを冒してまで脱税の手伝いをする税理士は、まずいません。
もちろん、「節税」は国民の正当な権利です。
私はいつも、合法的で有効な節税は積極的に行うべきだとお伝えしています。
ただし、脱税は完全にアウトです。
そして、場合によっては「一応合法ではあるが、やらないほうがいい節税」も存在します。
ですが、現実にはこういった思考を持った社長も時々います。
「とにかく税金を払いたくない」
「個人に税金がかかるのがイヤ」
こういう社長ですね。
例えば、法人税の節税をしたいという相談に対して、
「じゃあ役員報酬をしっかりシミュレーションして、個人で給料を取る方向でいきましょう」
という話をこちらから提案することがあります。
もちろん、個人には所得税や社会保険料がかかりますが、結果として法人の節税にはつながります。
ところが、それすらも「税金を払いたくない」と拒否する方がいます。
「領収書いっぱい集めてくるから、何とかならないか?」と。
いやいや、それはもう「経費」という形をした脱税です。
事実関係を歪めているわけですから、完全にNGです。
そういった仕事は、入力するにも時間と労力がかかりますし、
何より倫理的にも法律的にも問題です。
当然、ほとんどの税理士はそのような仕事を受けません。
いくら報酬が高くても、「脱税思考」がある時点でお断りされる確率は非常に高いです。
該当する方は、ぜひ今すぐに考え方を改めてください。
税理士が敬遠する社長の特徴②:粉飾志向がある
これは①の「脱税思考」とは真逆のパターンです。
脱税の場合は「利益が出ているので税金を減らしたい」という思考。
一方、粉飾は「赤字なのに利益があるように見せかけたい」というものです。
典型的な例として、在庫金額の水増しがあります。
通常、在庫は仕入れた時点では経費になりません。
販売して初めて経費として落とせます。
つまり、決算時点で残っている在庫は経費から除外され、利益に加算されることになります。
よって、税金を減らしたいなら在庫は少ないほうがいいし、
逆に黒字に見せたいなら在庫を多く見せる方が都合が良いわけです。
中には、ありもしない在庫を増やして黒字決算に見せかけるケースもあります。
また、実際にはかかっている経費を意図的に外す、売上を水増しする…
そういった粉飾行為も見られます。
ここで注意していただきたいのは、税務署は基本的に粉飾にはあまり口を出してきません。
なぜなら、税務上はむしろ多めに納税している状態だからです。
しかし、粉飾は金融機関にとっては重大な問題です。
銀行から融資を受けている企業が粉飾決算をしていたら、それは融資詐欺に該当します。
そして、粉飾を繰り返すと中毒性があります。
最初は1期だけ在庫を膨らませたつもりでも、翌期になるとその分が経費として跳ね返ってくる。
それをカバーするために、また粉飾を…と、負のループに入ってしまいます。
結果として、売上が減っているのに、なぜか在庫が増えているという異常な状況になります。
金融機関は、そういった財務諸表を見ればすぐにわかります。
ですから、粉飾で業績を「ごまかす」のではなく、
・経費削減
・粗利率の改善
・売上の向上
といった、本質的な改善を積み重ねていくことが重要です。
こういった対応ができず、粉飾に頼っている会社の仕事は、
税理士事務所としても基本的には受けたくないのが本音です。
税理士が敬遠する社長の特徴③:値切りがしつこい
最後はこれ、「しつこい値切り交渉」です。
近年、会計業界も人手不足が非常に深刻です。
特に成長中の事務所ほど、慢性的にリソースが足りていません。
そうなると、最初の打ち合わせ段階で
「値段どうにかなりませんか?もっと安くなりませんか?」としつこく交渉されると、
「あ、このお客さんはちょっと厳しいな…」と判断されてしまう可能性が高いです。
もちろん、プランを見直して価格を調整するような建設的な交渉は問題ありません。
でも、「値段だけ下げて、サービスはそのままで!」というスタンスは、
正直、税理士側からすると非常に負担です。
要点まとめ
① 自己資本と内部留保の重要性
- 自己資本(資本金+利益剰余金)を厚くしていくには、継続的な黒字経営が不可欠。
- 赤字や節税ばかりに走っていると、自己資本比率が低くなり、金融機関からの融資審査で不利になる。
- 特に「脱税思考」の経営者は、会社が成長しないリスクが高い。
② 債務超過 vs 資産超過
- 資産超過(資産>負債)は健全な状態。
- 債務超過(負債>資産)は非常に危険な状態で、金融機関からの信用も失われる。
③ 「税理士に嫌われる社長」の3大特徴
- 脱税思考
- 粉飾決算思考
- 無理な値切り(報酬を不当に下げようとする)
→ これらは会社の成長を妨げるだけでなく、税理士からも敬遠される。
④ 税理士報酬の決定要素とコスト削減の考え方
- 税理士報酬は以下で決まる:
- 顧問契約の有無(毎月の関与か申告書作成のみか)
- 売上・業種・総資産など会社規模
- 記帳代行の有無
- ミーティングの頻度
- 対面・オンライン対応の違い
- コスト削減策:
- 自社で記帳・会計ソフトの活用
- 顧問契約をやめて申告書作成のみ依頼する(年商が数千万円程度までなら現実的)
⑤ 成長する社長 vs 成長しない社長
- 成長する社長は「納税の必要性」「健全経営」を理解している。
- 成長しない社長は「節税や脱税」に偏り、行動力も低い。
🔷 講師の伝えたいメッセージ
値切りたいならサービスの範囲を明確に削る形で誠実に交渉を。
税理士に嫌われることより、会社が成長できないことのほうが重大。
税理士はあくまでサポーター。最終的に動くのは経営者自身。
脱税思考や粉飾思考から脱し、「納税を通じた企業体質の強化」を図るべき。