2023年10月から「インボイス制度」というものが始まりました。
実は、2021年10月からすでに登録手続きが始まっているようです。当初は軽い気持ちだったのですが、制度の内容を知るうちに「これはちょっと見逃せない」と思うようになりました。正直、不安もあります。
ということで、今回のテーマはこちらです。
「インボイス番号の登録手続きが開始! 適格請求書発行事業者として登録すべき人・すべきでない人&登録手続きの方法」
今回は、インボイス制度について、個人・法人を問わず共通のテーマとしてお話ししていきます。
今は2021年10月で、まさに登録手続きが始まったタイミングです。しかし、このインボイス制度が何なのかよくわからず、手続きをすべきかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、今回の動画では以下の構成でお話しします。
- インボイス制度が始まるとどうなるか
- 登録すべき人・すべきでない人の判断基準
- インボイス番号の登録手続きの方法
まず結論からお伝えします(詳細は後ほど説明しますが、ざっくりとした概要です)。
- 【①】今も将来も継続して売上1,000万円を超える安定企業は、早めに登録すべきです。私が経営する会計事務所や、顧問先のコンサル会社でも、すでに2021年10月から登録手続きを進め始めています。
- 【②】売上1,000万円以下の消費税免税事業者の場合は、状況を見ながら検討すべきです。制度開始は2023年10月1日ですが、その時点で登録番号を取得しているには、2023年3月31日までに登録申請が必要です。
業種によって判断が異なる部分もありますので、後ほど詳しく解説していきます。
ちなみに、事業者以外の一般消費者の方が「インボイスって何?」と気にされている場合でも、基本的にこの制度は一般消費者の財布に直接影響することはありません。あくまで事業者間の取引に関する制度ですので、ご安心ください。
続いて、制度が始まると実際にどのような影響があるのか、もう一度基本から確認していきましょう。私のチャンネルを普段から見ていただいている方にとっては復習になるかもしれませんが、初めての方はぜひチェックしてみてください。
この続きでは、以下のような内容をさらに掘り下げていきます:
- 消費税の基本的な仕組み
- 免税事業者と課税事業者の違い
- インボイス制度開始後の実務的な影響
- 実際の登録方法(e-Tax使用時の注意点など)
- 簡易課税制度など、選択肢として検討すべき対策
今後の事業運営に大きな影響を与える制度ですので、制度内容を正確に把握し、自社にとってベストな対応を選択できるようにしていきましょう。
インボイス制度で登録すべき人・登録すべきでない人とは?
2023年10月より始まるインボイス制度について、まだ全体像が明確でない部分もあり、今後の法改正や新たな規定の追加も予想されます。そのため、本記事で紹介する内容はあくまでも現時点での情報であり、最新情報には引き続き注意が必要です。
まず誤解されがちですが、インボイス制度は「インボイス番号を持っていない事業者が、顧客から消費税を受け取ってはいけない制度」ではありません。顧客が納得すれば、消費税を受け取ること自体は可能です。
正しくは、「インボイス番号を持っていない事業者に対して、取引先が仕入税額控除を行えなくなる制度」であり、これにより取引先が不利益を被るため、結果として免税事業者が取引から外される可能性があるのです。
ここで重要になるのは、皆さんの「取引先が事業者か一般消費者か」という点です。取引先が事業者である場合、相手は仕入税額控除ができるかどうかを重視します。免税事業者と取引を継続することで控除ができなくなれば、契約を見直す可能性もあります。
一方、相手が一般消費者である場合は、そもそも仕入税額控除という考え方自体が関係ないため、インボイス制度の影響は小さくなります。
この前提を踏まえた上で、インボイス登録の判断は以下の3パターンに分けられます。
登録すべき人(売上1,000万円を超える事業者)
すでに課税売上高が1,000万円を超えており、今後も安定的に事業を継続する見込みのある事業者は、早めに「適格請求書発行事業者」として登録を行うべきです。取引先が法人や個人事業主などの事業者である場合、登録していないと今後の取引に支障をきたす可能性があります。
登録を検討すべき人(免税事業者でBtoB取引中心)
現在は免税事業者でも、主な取引先が法人など事業者である場合は、インボイス制度の影響を大きく受けます。取引価格の見直しや契約の打ち切りにつながることもあるため、得意先とよく相談し、登録するかどうかを慎重に判断する必要があります。登録する場合は、制度開始の2023年10月1日に間に合わせるため、2023年3月31日までに申請書の提出が必要です。
登録を見送ってもよい人(BtoCの小規模事業者)
飲食業や小売業、美容業など、主に一般消費者を相手にしている事業者(BtoC)の場合は、消費者側がインボイス番号の有無を気にすることはほとんどありません。今すぐ登録する必要はなく、制度の動向を見ながら判断しても問題ないと考えられます。
適格請求書発行事業者の登録方法について
インボイス制度において「適格請求書発行事業者」となるためには、税務署に対して登録申請を行う必要があります。登録を希望する事業者は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。課税事業者でない場合は、同時に「消費税課税事業者選択届出書」の提出も必要です。
ただし、2023年10月1日を含む課税期間中に登録する場合に限り、申請手続きが簡略化され、「消費税課税事業者選択届出書」を省略できる特例が適用されます。これにより、登録申請書のみで課税事業者になることが可能です。
この場合、10月1日から課税事業者となり、同年10月〜12月分については消費税の申告義務が生じます。翌年3月にはこの期間の確定申告が必要になります。
また、簡易課税制度の適用を希望する場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を同じ課税期間中に提出する必要があります。たとえば個人事業主であれば、2023年12月31日までの提出で、当該期間に簡易課税を適用することが可能です。
このように、インボイス制度は全ての事業者にとって無関係ではありません。特にBtoB取引を行っている事業者は、制度の影響をしっかり理解し、早めの準備を進めていくことが求められます。
的確請求書発行事業者(インボイス)の登録手続きは本当に簡単?
インボイス制度の登録手続きは、実際にはそれほど複雑ではありません。必要な書類はわずか2枚であり、所定の項目に正確に記入するだけで完了します。ここでは、実際の申請書に基づいて、記載方法と注意点について解説いたします。
申請書は2ページ構成となっており、1ページ目の左上には、所轄の税務署名(例:関西税務署)を記載します。次に、申請者欄では、たとえば個人事業主である場合、住所を記入します。その下にある「納税地」には事業所を選択することも可能です。お名前には申請者名を記入します。ここでは例として「節税五郎」氏とします。
電子申告を行う場合は、これらの情報は画面上で直接入力していく形式となります。
下部には「事業者区分」という項目があります。現在免税事業者である場合は「免税事業者」にチェックを入れます。すでに課税事業者である場合は「課税事業者」にチェックを入れてください。これは、どちらの事業者であっても登録申請には必要な手続きとなります。
2ページ目では、まず「免税事業者の確認」欄において、特例による申請か否かを確認します。ここでは、消費税課税事業者選択届出書を提出せず、登録申請書1枚で手続きを完結させるパターンに該当する場合、「該当する」にチェックを入れます。
続いて、個人番号(マイナンバー)、生年月日、職業(例:コンサルタント)を記載します。講師業であれば「講師」と記入します。さらに、事業年度や会計年度情報も記入してください。
その下の「登録要件の確認」では、現在が課税事業者かどうかを選択します。ここでは、「課税事業者ですか?」という問いに対して、たとえ現時点で免税事業者であっても、10月1日以降に課税事業者となる予定であれば「はい」を選択する必要があります。
次に「税法違反の有無」について記載します。過去に罰金以上の刑罰を受けたことがない場合は「いいえ」にチェックを入れます。
1ページ目に戻ります。個人事業主の方の場合、氏名のみでは事業主体が分かりづらい場合があるため、「屋号」を設定することが可能です。たとえば「〇〇商店」や「〇〇スタジオ」といった屋号を併記することで、取引先への印象も明確になります。
また、インボイス制度で取得した登録番号や屋号などの情報は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に公開されます。そのため、住居住所がそのまま納税地として登録されている場合、個人情報保護の観点からも、事業所住所を納税地として登録することが推奨されます。
この公表情報には、登録番号・氏名または屋号・登録日・主たる事務所所在地などが含まれ、得意先との取引にも大きく関わります。
登録番号の体系については、法人の場合は法人番号に「T」を付加したものとなります。法人番号は誰でもインターネットで確認可能です。一方、個人事業主には新たに13桁の事業用番号が割り当てられ、マイナンバーとは別に管理する必要があります。
このように、個人事業主は「個人のマイナンバー」と「事業者としてのインボイス番号」という2つの番号を並行して管理しなければなりません。非常に煩雑であるため、制度設計上もう少し簡略化されることが望ましいところです。
2023年10月以降、このインボイス番号はすべての請求書に記載が義務付けられるため、非常に重要な要素となります。
登録通知の受領は、できる限りe-Taxによる電子申告を利用することが推奨されます。理由は、登録通知の到着が早く、紛失リスクが低く、また得意先にもすぐに通知が可能となるためです。
電子データで受け取った通知は、印刷して保存・提出することも可能です。
結論:誰が登録すべきか
既に課税事業者である方、または課税売上が基準を超える見込みのある方は、速やかに登録申請を行うべきです。
一方、免税事業者であるものの取引先が法人や事業者(BtoB)の場合は、取引継続の観点から登録を早めに行うことが推奨されます。
ただし、小売・飲食などのBtoCビジネスを営む方は、当面様子を見ても差し支えないケースもあります。
なお、特に免税事業者が番号を取得する場合、通常必要となる「消費税課税事業者選択届出書」は提出不要となる特例があります。登録申請書のみで、2023年10月1日からの課税事業者としての登録が可能となるため、スムーズな手続きが可能です。